確定申告 きほんの「き」

さて、確定申告の基礎の基礎を解説していきます。


日本の税制においては、納税者の自主的な申告に基づき課税を行う「申告納税制度」が原則とされています。すなわち、納税者自身が税額の計算を行ったうえ、「①このような計算により、②私の収めるべき税金はこの金額となります。」と国に申告をし、国はその金額をもとに納税者に課税を行います。この納税者自身による「申告」の一つが確定申告であり、確定申告書には、①税額の計算の過程と②計算結果である納税額を記載する必要があるわけです。

 確定申告書に何を記載すればよいのかを理解するためには、「所得税の仕組み」を理解する必要があります。そこで以下では、まず、事業者を念頭においたうえで、所得税決定の仕組みを簡単に解説させていただきます。


★参考事例
個人事業主Aは、2018年1月1日から2018年12月31日までの間に、650万円の売上をあげ、経費として200万円を使った。




所得税額は、


① 所得はいくらか

×

② 税率はいくらか

||

③ 税額はいくらか




の3つのステップによって計算されます。



①所得はいくら?

 「所得がいくらか」というのは、簡単な話、「稼ぎはいくらですか?」ということです。事業所得者であれば、「売上-経費」ですし、給与所得者であれば、給与額となります。したがって、上記の個人事業主Aの事例では、650万円-200万円で、450万円が所得となります。


②税率はいくら?

 税率は、ご存知の通り、累進課税制度が採用されており、①の金額によって変わります。税率の一覧表は、国税庁のHPに掲載されています。個人事業主Aの事例では、450万円ですから、20%となりそうです。


③税額はいくら?

 ①の所得額に、②の税率をかけ合わせた額が、税額となります。個人事業主Aの事例では、450万円×20%なので、90万円となりそうです。






ここまでが、かなりざっくりとした全体像です。この全体像は、簡単なようですが、しっかりとしっかりと意識してください。税法上のこまごまとした概念が、上記①から③のどの部分の話なのかをきっちりとおさえていくことが、税を理解する近道となります。




さて、ここから少しずつ掘り下げていきましょう。


①所得はいくら?

 ⑴ 売上-経費

 まずは、売上がいくらなのか、そしてそれにかかった経費はいくらなのか、ということを確定し、利益がいくらなのかを確定します。ここでいう「経費」には、売上原価のほかに、接待交際費や会議費等などがあります。節税との関係で非常に関心度の高い「どの領収書が経費になるのか?」という問題は、基本的にはこのレベルの話です。経費としてどのようなものが落とせるのか、どの程度落とせるのかをおさえたうえ、適切な領収書を確保し、経費として計上することが節税の第一歩です。

 上記の個人事業主Aの事例では、これらをまとめて200万円と記載していますが、これには、仕入れに要した費用のほか、クライアントへの接待費用や、事務所家賃、光熱費、通信費、交通費等が含まれます。


 ⑵ 所得控除

 所得はいくらか?というのは、「稼ぎはいくらか?」ということであるとお話ししましたが、実際には「稼ぎ=所得」のうち、「税金をかけない部分/税金がかからない部分」が存在します。例えば、人が生きていくのに最低限の金額しか稼いでいないのに課税をされてしまうと困ったことになるので、人が生きていくのに最低限必要な金額については、税金をかけないでおこう、といった配慮がなされており、これを基礎控除といいます。このように、政策的な観点等から、課税の対象から除外することが許容されている金額があり、この「税金をかけない部分/税金がかからない部分」、つまり「所得」から「控除」することを許容されている部分を「所得控除」といいます。

 所得控除には、社会保険料控除や、生命保険料控除、地震保険控除などがあります(詳細は国税庁HPをご覧ください。)。節税対策としてあげられる小規模企業共済への掛金も、この所得控除が認められることにより、節税効果が生じるものです。この「所得控除」をうまく利用することが節税の第二歩目といえるでしょう。


 ⑶ 課税所得

 「儲け=所得」から「所得控除」を差し引いた金額が、「課税」の対象となる「所得」金額となります。この「課税の対象となる所得金額」を指して、「課税所得」といいます。

 個人事業主Aの事例でも、売上から経費を引いた450万円から、更に基礎控除や、各種控除金額を引いた額に課税がなされることになります(ただし、以下では単純化のため、450万円を課税所得として説明しています。)。


②税率はいくら?

 日本の所得税法においては、累進課税制度が採用されています。この累進課税制度は、ご存知の通り、所得金額が上がるごとに税率が上昇する、という制度です。先ほど記載したとおり、税率の一覧表は、国税庁のHPに掲載されていますが、当該一覧表の「課税される所得金額」は、上記で説明した「課税所得」を意味します。

 勘違いが生じやすい点かと思うので、記載しておきますが、所得があがるごとに税率が上がりますが、これは、所得全体の税率ではなく、該当箇所の税率のみが上昇することを意味します。つまり、所得が195万円以下だと税率5%ですが、所得が196万円になると、195万円については税率5%、1万円については税率10%の所得税がかかります。もっとも、計算を単純にするため、国税庁のHPには、「速算表」が示されており、課税所得の全体に税率をかけたうえ、「控除額」の欄に記載される金額を引くことで、簡単に計算できるようになっています。

 個人事業主Aの事例では、450万円が課税所得ですので、195万円について5%、195万円から330万円の部分に10%、330万円から450万円の部分に20%の課税がなされることになりますので、195万円×5%+(330万円-195万円)×10%+(450万円-330万円)×20%=47万2500円となります。速算表を使うと、450万円×20%-42万7500円=47万2500円となります。


③税額はいくら?

 ①で確定した課税所得額に、②で確定した税率を掛け合わせると、「税額」が算出されます。算出された税額から、一定額を控除することが認められることがあり、これを、「税額控除」といいます。税額控除のうち、主なものについては、国税庁のHPをご覧ください。





以上が、きほんの「き」となります。

上記で書いていることは、簡単なことのみですが、複雑な税制を理解するうえで非常に重要な骨格の部分になります。
当ブログの他の確定申告関係の記事はもちろん、他の租税関係の勉強等をする際にも、上記との関係を意識していただければ幸いです。

なお、上記は、全体のイメージをつかむために、かなりざっくりと説明していることにご留意ください。

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